のぶちかさんのイモ茶がゆ




ウガヤでも朝ご飯を出せたらいいな。
すると、あっちゃんが、「じゃあ、一平君、茶がゆは?」と。
「え?そりゃ、茶がゆだと奈良の名物だからばっちりだけど、作れるの?」
「そんなん簡単やで!だって朝ご飯に毎日作るもんやんか、誰でもできるって。
うちで作ってた茶がゆの味でよかったら、作って作って!」
「じゃあ!」
ということで、ウガヤの朝ご飯は「茶がゆ」に決まりました。

「この茶がゆはね…」と、あっちゃんは茶がゆの思い出を話してくれました。

「この茶がゆはね、めったに台所には立たない父が、 わたしが奈良を忘れないように…って
作ってくれててん。 『お前は鉄砲玉みたいに、すぐどこかへ飛んでいってしまう。
でも、この味さえ覚えとけば、ちゃんと帰ってこれる。料理なんぞせえへんパパが、こうやってわざわざ作るんや。この作ってる姿ごと、絶対忘れへん。せやから、だいじょうぶや』 って言いながら。

母も、『なんもせーへんパパが、茶がゆだけは作ってくれるんやで~ 感謝しなあかんで~」と、
そこへ畳みかけてくるねん。

どんなにお腹が減ってなくても、そんなん言われたら食べなしゃーないやんか。
でも、今から思ったら、確かに嫁ぎ先なんかで落ち込んだ時って、
自然と自分で茶がゆ作って食べてるんよね。 食べてたら、作ってくれてたパパの姿が浮かぶんよ。

あのおっさん、とっとと先に神さんとこ逝ってしもたけど、
そのときの思いはちゃんと伝わってくるねん…
あのおっさんは、ほんま無口やったし、照れ屋やってんけど、
娘のことを、めっちゃ考えて心配してくれてたのは、わかってた。
『無事でいてくれ』という切なる思いがつまった味やねん。

ウガヤのイモ茶がゆは、あっちゃんのパパさんの「無事」という願いのこめられた味を
そのまま再現しております。

どうぞ、みなさん、ウガヤに来られたときには、是非、ご賞味くださいませ。
あ、ちなみに、「のぶちかさん」というのは、あっちゃんのパパさんの名前です。
奈良県吉野郡川上村出身の、生粋の奈良県民。 奈良生まれの奈良育ち。
一生を奈良で過ごされました。 会いたかったな。
うちの父と、神さんとこで会ってるといいな。


瀬戸一平