奈良公園と鹿





大阪市内から近鉄線に乗り、生駒トンネルを通り抜けた先の「生駒駅」で扉が開いた瞬間、
車内に入ってくる空気は、あきらかに「何か」が違います。

 

自然を神と崇拝していた時代から、あまり変わっていない空気がそこにはあるのです。

とても自然が多く、その自然に溶け込むような形で寺社仏閣がたたずんでいる奈良。
そこで、生活する住民たち。
ふと「共存する」という言葉が頭に浮かびました。
もっというと、「自然に畏れ敬う心を忘れずに住まわせていただく」という謙虚な姿勢。
それは、古き良き日本の原風景なのではないかと思うのです。

 

私は、その空気に魅了され、そして、この空気をもっと多くの旅人に感じていただきたいと思い、
奈良でゲストハウスを始めました。

 

奈良の『自然との共存』の象徴として存在するのが、鹿
奈良公園の鹿は、昔々春日大社の神様が白い鹿に乗ってやってこられてから
そこに住んでいるといわれています。
ちなみに、奈良公園の鹿は野生です。

 

奈良公園は、奈良県庁などがある町の中にあります。
鹿を“閉じ込めておくため”の柵はなく、鹿は悠々と自由に奈良公園や街中を歩きます。

 

柵という自然との境界線を設けない奈良に住んでいる方の意識。
日本の街中でもこういう光景はまれではないでしょうか?

 

昔は、鹿を殺してしまったら死刑になった時代もあったようです。
鹿を敬い、神(自然)を敬う姿勢がそこに現れているような気がしてなりません。
そして、侵さざるべき場所や存在に対する畏敬の念の大きさを感じずにはいられません。

 

一度、奈良に来られた方は、こう言います。
『すごく落ち着く場所ですね。時間の流れが違います。』と。

 

都会と違う、自然を敬い、共存しながら生きているからこそある雰囲気。空気感。
それは間違いなく奈良独特の落ち着きや、ゆったりとした時間の流れを生んでいます。

奈良に来て、是非その空気を感じてください。
忘れていた日本人の知恵や、価値観を思い出すきっかけになるかもしれません。

 

瀬戸一平